世々にわたる神の計画

第 13 章

 この世の国々 

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この世の国々

――第一の支配

――その喪失

――その買い戻しと回復

――模型的神の国

――それを横領する者

――現在の支配の二つの部分

――神が定めた諸権力

――ネブカデネザルの世界観

――ダニエルの見解と解釈

――他の見地から見たこの世の国々

――現在の政府に対する教会の正しい関係

――王の神権に対する略論

――キリスト教国の誤った主張

――第5帝国にある大きな希望

 

 

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Man was created in God's image.

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"Male and female created He them."

 

    神の啓示の第一章には、神の地上的被造物とその支配に関する目的が明らかにされている。神はまた言われた。「われわれかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすべての獣と、血のすべての這うものと治めさせよう。

   」神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、かみのかたちに創造し、男と女に創造された。神は彼らを祝福して言われた。「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物を治めよ。」

   このように、地上の支配は最初の人間アダムで代表される人類の手に委ねられた。アダムは完全であり、したがって地上の王、支配者となる資格が十分にあったのである。

   ふえよ地に満ちよ、地を従わせよという使命は、アダムだけに与えられたのではなく、すべての人類に与えられたのである。彼らに治めさせよう。もし人類が完全で罪なき状態にとどまっていたならば、この支配権は、人類の手から決して取り去られなかったであろう。

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Dominion of Earth was given to Adam.

     この使命の中で、人間は、同胞である人間を支配する権利を与えられていないことに気づくであろう。ただ、全人類は、地上の支配権を有し、土地を耕し、その生産物を共通の利益のために使うことが許されているのである。

   地上の植物や鉱物の富が人間の支配下に置かれたのみならず、様々な動物の種族は人類の有益のために使われるべくつくられたのである。もし、人類が完全性を保ち、創造者の最初の意図を実行していたならば、その数が増すにつれて、人類は共に相談し合い、お互いの努力を組織化し、共通の祝福のために正しい賢明な配分の手段を工夫することが必要だったであろう。

God did not give man dominion over his fellow-men.

 

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Slavery
is not God's design
for men.

 

    そして、時の経過と共に、その数は共に集まり、相談することが不可能なほどおびただしくなるので、彼らの共通の意見を表明し、彼らのために行動する。ある一定の数の代表者を選ぶことが必要となったであろう。

   そして、もしすべての人類が精神的、肉体的、道徳的に完全ならば、もしすべての人類が神と神のおきてを第一に愛し、また、隣人を自分を愛するように愛するならば、そのような制度に少しの軋轢も生じないであろう。

こうして分かるように、地上の支配に関する創造者の最初の意図は、共和政治、すなわち各個人が政治に参加し、すべての人が主権をもつのである。つまり、自分自身のため、公共のため義務を遂行するために、すべての点で十分な資格を持つのである。

God designed
a government
in which every man would be
a sovereign --

governed in harmony with the Supreme Ruler
of the universe, Whose law is love.

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Love fulfills
God's law.

     しかし、人間に与えられたこの地上の支配は、一つの出来事次第でその永続性が左右されるのである。

   それは、この神から与えられた支配権、常に愛という律法を持つ宇宙の最高の支配者と調和していなければならないということである。愛は律法を完成するものである。

  心をつくし、精神をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ……自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよ。(ローマ1310、マタイ223740

   人間に与えられた、この偉大な恩恵に関して、ダビデは神を讃えて言う。ただ少し人を天使よりも低く造って、栄と誉とをこうむらせ、これにみ手のわざを治めさせられました。(詩篇856

Adam’s disobedience forfeited his life
and dominion
over earth.

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     アダムという人間において人類に与えられたこの地上の支配権は、地上の神の国の最初の確立であった。こうして人間は、神の代理として支配権を行使したのである。しかし、最高支配者に対する人間の不従順は、人間の命を奪ったばかりでなく、神の代理として地上を支配するためのすべての権利と特権とを没収したのである。

   その時から人間は、王位を追放され、死を宣告された反逆者なのである。そして、地上の神の国はすみやかに滅び、その時以来、ほんの短い間、イスラエルに模型として存在した外は再建されていない。エデンにおいて、人間は命と支配の権利を失ったけれども、それは急に取り去られはしなかった。

   死を宣告された命が存在する間は、人間は、自分自身の考えと能力に従って地を支配することを許されているのである。そしてそれは、神が人間のために定められた時に、人間が買い戻された支配権を再び握るまで続くのである。

Our Lord’s death purchased man
and his dominion.

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     私達の主の死は、人間をあがなったばかりでなく、地上の支配権を含むすべての最初の遺産を買い戻したのである。それを買い戻したからには、その権利は今、主にある。主は今、完全な権利を持ち、間もなく来る定められた時には、自分の買い戻した物を自ら所有するであろう。(エペソ114

   しかし、主が人類が買ったのは、主の奴隷として使うためではなく、人間を以前の状態に回復するためであり、地上の支配権を回復するためなのである。人間が再び主の意思に調和して働くことが出来るようになる時、すべての人間にとっての最初の祝福を人間に与えるために、それを買い戻したのである。

   だから、メシヤの地上の支配は永遠に続く訳ではない。それは、主の鉄則によってすべての反逆と不従順とを押え、堕落した人類を元の完全な状態に回復するまで、すなわち、人類が最初に意図されたように地上の支配を正しく行うことが完全に出来るようになるまで続くだけである。こうして回復される時、神の定めた代理としての人間の支配下にこの地上は再び神の国となるであろう。

Israel was typical
of the promised
kingdom.

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     ユダヤ時代の間、神はモーゼと士師たちの下に、神の国としてイスラエルを立てた。――これは一種の共和国であったが、模型であったにすぎない。そして、後に立てられた専制的な支配、特にダビデとソロモンの支配は、ある意味でメシヤが支配する時、立てられる約束の国の模型であった。

   まわりの国々とは異なり、イスラエルはエホバをその王として仰ぎ、彼らの支配者は、詩篇787071で分かるように、その王の下に名目上、仕えたにすぎない。これは、はっきりと歴代誌138歴代誌2923に示されている。

   そこでイスラエルは、主の国と呼ばれ、またソロモンは(最初の王、サウロに次ぐ40年間を、その同じ位に座し、同じ支配を実施した)その父ダビデに代わり、王としての王の位に座したと書かれている。

The typical kingdom
of Israel
was overthrown...
    イスラエルの民が主にそむいた時、主は遂に彼らからその国を完全に取り去るまで、彼らを繰り返し罰せられた。ダビデの家系に属する最後の支配者ゼデキヤの時代に、王権は剥奪され、そこで模型的神の国は倒れた。

   この事実に関する神の決意は、次のような言葉に表わされている。汚れた悪人であるイスラエルの君よ、あなたの終りの刑罰の時であるその日が来る。主なる神はこう言われる。かぶり物を脱ぎ、冠を取り離せ。

until Christ,
the rightful heir,
claims it.

 

 

Since A.D. 70 Israel has been scattered
among all nations.

     すべてのものは、そのままには残らない。……ああ破滅、破滅、破滅、わたしはこれを来させる。私が与える権威を持つ者が来る時まで、その跡形さえも残らない。(エゼキエル212527)この預言の成就として、バビロンの王がイスラエルを襲い、その民を捕虜とし、イスラエルの王を廃した。

   その後、ペルシャ人クロスによって国民的存在を回復されたけれども、イスラエルはAD70年にその国家的存在を最終的に破壊されるまで、メド、ペルシャ、ギリシャ、ローマなどの相次ぐ帝国の従属民となり、その時以来イスラエルは、全世界に散在するようになったのである。

イスラエルの国は、アダムの堕落以来、神の政治と律法とを代表するものとして神が認めた唯一の国であった。彼ら以前にも多くの国が存在した。しかし、一つとして神をその創立者と主張し、またはその支配者を神と代表する者であると主張する権利を有する国はなかった。イスラエルの王様がゼデキヤから奪われ、イスラエルの国が破滅させられた時、世界を相続する権威を持つキリストが来るまで、その破滅の状態にとどまるべきであると宣告された。だから推論上、神の国の再建までの間に権力を持つすべての国々は、この世の君の支配下にある。

この世の国と名づけられ、ゆえに自らを神の国であるとするいかなる主張も偽りであることになる。また、この神の国は、キリストの初臨の際に建設されるものでもない。(ルカ1912)その時以来、神は世界の中から、その御座の共同相続者としてキリストと共に支配するにふさわしいと考えられる人々を選びつつあるのである。キリストの再臨までは、キリストが国と権力と栄光とを取って万物の主となり支配することはあり得ない。

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The Arch of Titus, Rome, Italy

The Arch of Titus, on which the Jewish menorah taken from the Temple in Jerusalem is depicted, commemorates Titus’ capture of Jerusalem in 70 A.D.

All other kingdoms are styled
the "Kingdoms
of this World."
     イスラエル以外のすべての国々は、聖書によれば異邦の国、すなわちこの世の君であるサタンの支配下に属するこの世の国である。ゼデキヤの時代に神の国が奪われたことは神が認める政府、または律法や問題を神が特別に管理する政府を、この世界から取り去ったことを意味する。

   それについて神は、空位期間中のエルサレムと世界の支配は、異邦の政府によってなされるべきであると公言して(ルカ2124)異邦の政治を間接的に認めている。

"...Jerusalem
shall be trodden down of the Gentiles until
the times of
the Gentiles be fulfilled."
Luke 21:24

 

Fallen man
has proven
his inability
to govern himself.

 

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     この空位期間、または神の王権による政治の剥奪と、もっと偉大な力と栄光を持つキリストによるその回復との中間期間は、聖書によれば異邦人の時と稱せられる。そしてこの世の国が支配することを許されているこのまたは年数は限定されている。またメシヤの下に神の国が再建される時も同様に定められ聖書の中に記されている。

これらの異邦の政治は悪い政治ではあるけれども、神は賢明な目的のためにそれを許し、いやむしろ、それは神によって立てられたのである。(ロマ131)彼らの不完全と失政は、罪の極致を示す一般的教訓の一部となり、堕落した人間は、自ら悟るほどに、自らを統治する能力のないことを証明するのである。

  人の怒りは神をほめたたえるまでに、すべてのものが善のために働くように計画されているのである。善をなさず、目的を果たさず、なんの教訓にもならないものは、神が拘束されるのである。(詩篇7610

Satan misrepresented God’s character
and blinded men
to the truth.

 

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堕落した人間は自らを支配
することができない

   人間の能力が完全な政治を確立することができないのは、堕落し、腐敗した状態における人間の弱さのせいである。完全な政治をなんとかして起こそうとする人間の努力を妨げるこの弱さが、最初の人間を誘導して最高支配者たる背かせたサタンによって利用されているのである。サタンは常に人間の弱さを利用し、善を悪であるかのように、悪を善であるかのように見せかける。

   そして、神の性格と計画を偽って伝え、真理に対して人間を盲目にする。このように不従順の子らの心に働きかけ(エペソ22)ることによって、彼らをサタンの捕虜にし、主と使徒が呼んだように、自らをこの世の君、または支配者とするのである。(ヨハネ14301231

   サタンは権利を持って、この世の君となったのではなく、欺きと惑わしと堕落した人間を支配することによって、これを横領したのである。サタンがすぐに退位させられるのは横領者だからなのである。もしサタンがこの世の君として本当の権利を持っていたならば、このように扱われはしなかったであろう。

When the Gentile Times expire,
Satan will be bound and overthrown.
     このように、現在実行されている地上の支配は、目に見えない部分と、目に見える部分とがあることが分かるであろう。前者は霊的、後者は人間的部分である。――目に見える地上の国々は、霊的な王、サタンの支配下に少なからぬ影響を受けているのである。

   それは、私達の主に対して、この地上の目に見える最高の主権者の地位を提供することが可能なほどの支配権をサタンが所有しているからである。(マタイ49)異邦人の時が終わる時、現在の支配力の両部分は終りを告げ、サタンは縛られ、この世の国々は倒れるであろう。

Poverty3.jpg (52106 bytes)      堕落した盲目の、うめき苦しみつつある被造物は、何世紀もの間、すべての歩みにしくじり、疲れた足を引きずってきた。そして最高の努力さえ実を結ばないことが証明された。それにもかかわらず、先哲たちが夢みた黄金時代は手中にあると、未だに渇望し続けている。待ち望まれた希望よりも更に偉大な救済が、神の子として御国の権威をもって間もなく出現する。見下げられたナザレ人とその使者によって実現されようとしていることを世は知らない。(ロマ82219

   これらの国々が、神の支配的摂理のうちにその目的を果す時、許されている現在の悪い政治とその結果、もたらされる良い政治に関して、神の子たちに適切な知識を与えるために、神は預言者を通して、この世の国の雄大なパノラマ的な幾つかの展望を示し、ことごとに聖徒を励まそうとして、神ご自身の永遠の義なる御国の建設と平和の君であるメシヤによるこの世の国々の打倒を教えられた。

God gave
the world empires permission to rule.
     支配権を実行しようとする人間の現在の努力は、エホバの意志と力に対抗するものではなく、それは神の許しによるものであることが、ネブカデネザルへの神のメッセージによって示されている。その中で、神はキリストの国が建てられる時まで、バビロン、メドペルシャ、ギリシャ、ローマの四つの帝国に支配する許可を与えられた。(ダニエル23743)これは統治権の信用契約がどこで切れるかを示している。

今、この預言的展望に触れるに当って、私達はこれがイスラエル国、すなわち模型的主の国の転覆の時に、バビロンで始まったことを覚えておこう。

地上の支配に関するネブカデネザルの夢

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  私達の教えのために書かれまた、聖書の与える忍耐と慰めとによって、私達に望みをいだかせる(ロマ154131)これまでに書かれた事がらの中には、ネブカデネザルの夢と預言者によつその夢の解き明かしがある。(ダニエル23145

    

王よ、あなたは一つの大いなる像が、あなたの前に立っているのを見られました。その像は大きく非常に光り輝いて、恐ろしい外観をもっていました。その像の頭は純金、胸と両腕とは銀、腹とももとは青銅、すねは鉄、足の一部は鉄、一部は粘土です。あなたが見ておられた時、一つの石が人手によらずに切り出されて、その像の鉄と粘土の足を撃ち、これを砕きました。

こうして鉄と、粘土と、青銅と、銀と、金とはみな共に砕けて、夏の打ち場のもみがらのようになり、風に吹き払われて、あとかたもなくなりました。ところがその像を撃った石は、大きな山となって全地に満ちました。

これがその夢です。今、私たちはその解き明かしを王の前に申し上げましょう。王よ、あなたは諸王の王であって、天の神はあなたに国と力と勢いと栄えとを賜い、(ここに異邦の国々、または権威が神に定められたものであることが示されている)また人の子ら、野の獣、空の鳥はどこにいるものでも、皆これをあなたの手に与えて、ことごとく治めさせられました。あなたはあの金の頭です。

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あたなの後にあなたに劣る一つの国が起こります。(銀)また第三に青銅の国が起って、全世界を治めるようになります。第四の国は、鉄のように強いでしょう。鉄はよくすべてのものをこわし、砕くからです。鉄がこれらをことごとく打ち砕くように、その国はこわし砕くでしょう。あなたはその足と足の指を見られましたが、その一部は陶器師の粘土、一部は鉄であったので、それは分裂した国をさします。しかしあなたが鉄と粘土との混じったものを見られたように、その国には鉄の強さがあるでしょう。その足の指の一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は、一部は強く、一部はもろいでしょう。

  ダニエルはその夢をこう説明する。

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Gold Head
=  Babylon
Silver Arms
& Breast
=  Medo-
    Persia
Brass Belly
& Thighs
=  Greece

Iron Legs
=  Rome
Stone

= God's
Kingdom

 

四つの大帝国

歴史を学ぶ者ならば、かつて興った多くの地上の小帝国のうちから、ダニエルが語った四つの帝国がどれであるか容易に見つけることができるであろう。これらは大帝国と呼ばれるもので、最初はバビロン、金の頭(38節)、第二番目はバビロンを征服したメド・ペルシャ、銀の胸、第三番目はメド・ペルシャを征服したギリシャ、銅の腹、そして第四番目は強い国ローマ、鉄のすねと粘土の混じった足である。

   そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が皇帝アウグストから出た。(ルカ21

    鉄の帝国ローマは、その前に興った帝国よりはるかに強く、長続きした。事実ローマ帝国は、今だにヨーロッパの国々の中に表わされているように、存続している。ローマ帝国の分割は、その像の10の足の指によって表わされる。粘土と鉄の混ざっている足は、教会と国家の混合を表わす。

   この混合は、聖書の中ではバビロン――混乱――と呼ばれている。私達が間もなく見るように石というのは真の神の国のシンボルであり、バビロンは石の模造品――粘土――を代用して(鉄の)ローマ帝国の断片的な遺物と結合したのである。この教会と国家の混合制度は、名目上の教会が、主がバビロン・混乱と呼んだこの世の国と結合したものであり、自らをキリスト教国家――キリストの国――と称するのである。ダニエルは説明する。

   あなたが鉄と粘土との混じったものを見られたように、それらは婚姻によって、互いに混ざるでしょう。(教会とこの世の混合――バビロン)しかし、鉄と粘土は相混じらないように、かれとこれと相合することはありません。

それらは完全に混合することはあり得ない。

それらの王たち(足の指で表わされる国、いわゆるキリスト教国)の世に天の神は一つの国を立てられます。これはいつまでも滅びることがなく、その主権は他の民にわたされず、かえってこれらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は、立って永遠に至るのです。(ダニエル24344

     ダニエルはここでは、私達が聖書のいたる所に見る異邦人の支配の終りのことを述べていない。しかし、すべての預言された状況が、今日その終りに近づいていることを示している。法王制度は、自らをここで約束されている天の神が立てる国であること。

   法王制度が、すべての他の国々を粉々に滅ぼして、その預言を成就したことを長い間主張してきた。しかし、真理は、これとは反対に粘土と鉄のように、名目上の教会と地上の帝国が単に結合しただけであって、法王制度は、真の神の国では決してなく、神の国の単なる模造品であるにすぎない。

   法王制度がこれらの地上の国々を滅ぼしたのではない最大の証拠は、それらの国々が今だに存在することである。そして、今や粘土は乾き、もろくない、その粘着力を失いつつある。そして鉄と粘土は分離の兆候を示し始め、真の王国によって打たれる時、たちまち粉々になるであろう。

更に続けてダニエルは言う。一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と、青銅と粘土と、銀と金とを打ち砕いたのを、あなたがたが見られたのはこの事です。大いなる神がこの後に起こるべきことを、王に知らされたのです。その夢はまことであって、この解き明かしは確かです。45節)

   人手によらずに切り出されたこの石は、異邦の権力を打ち砕く真の教会、すなわち神の国を表わしている。福音時代の間、この石、王国は人手によらず、エホバの目に見えない力である真理の力、又は霊によって未来の地位と勢力のために切り出され、刻まれ、形づくられつつある。

   これが完成する時に、この世の国々を打ち滅ぼすのである。その像によって象徴されるのは人々ではなく支配力があるので、支配力が崩壊しても人々は救われるであろう。私達の主イエスは、人の命を滅ぼすために来たのではなく、それを救うために来たのである。(ヨハネ317

The stone cut out of a mountain represents the kingdom of God...
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    その石が準備のために切り出されつつある間は、その未来の運命から考えて、胎児の山(embryos mountain)呼ばれ得る、と同様に教会も又、神の国としばしば呼ばれているし、又呼ばれ得るのである。しかし、事実はその石が像を打ち砕いてしまうまでは、山とならないのと同様に、教会も完全な意味では、主の日すなわち諸国に及ぶ怒りの日又は悩みの日が終り、教会が確立され、すべての支配力がそれに従う時、はじめて全地を満たす王国となるのである。

   ここで、主がキリスト教会の勝利者に約束したことばを思い起こす。勝利を得る者には、私と共に私の座につかせよう。

勝利を得る者、私のわざを最後まで持ち続ける者には、諸国民を支配する権威を授ける。彼は鉄のつえを持って、ちょうど土の器を砕くように、彼らを治めるであろう。それは私自身が父から権威を受けて治めるのと同様である。(黙示録32122627、詩篇2812

The hand
that smote the governments will heal the people.
     鉄のつえが破壊の業を達成する時、打ったその手は治しに変り、人々は主にって、主は彼らを治し(イザヤ1922、エレミヤ32223、ホセア61144、イザヤ23)灰にかえて美を、悲しみにかえて喜びの油を、憂いの心にかえて讃美の衣を彼らに与えられる。
Nebuchadnezzar’s dream represents the world’s viewpoint.

地上の支配に関するダニエルの夢

ネブカデネザルの夢の中で、私達は、世俗的見地から見た地上の帝国を、人類の栄光と荘厳と権力の象徴であると見た。けれども又、金から鉄や粘土への価値の低下で表わされる彼らの廃退と最終的破滅の暗示もその中に見たのである。

 

 

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Emperor Diocletian (245-313 A.D.)

    石の階級である真の教会は、その選択の間、、又は山から採掘される間は、世界から何の価値もないものとして見られるのである。それは人から見下げられ拒否される。世界は、教会の中に彼らの求める美を発見することは出来ない。常に彼らによって失望させられ、だまされ、そこなわれ、虐待され続けてきたにもかかわらず、世界はこの大きな像で象徴される支配者や政府を愛し、讃え、ほめ、かつ支持する。

   十の足の指に存在する精神であって、それは今日、権力の命令一下、お互いを殺し合うために使用されている最新式の残忍な装置で武装した1200万人余の陸海軍隊に見られる。

   現在は誇る者が幸福であると言われ、悪を働く者が力を持つ。(マラキ315)それが事実とすれば、石の打撃と神の国の建設によるこの偉大な像の破壊は虐げられた者を解放し、すべての人々に祝福をもたらすことを意味するのではないだろうか?たとえしばらくの間、変化が災いと悩みを招くとしても、最後には平和な義の実を結ぶようになるであろう。
       しかし今度は、見地を変えて同じ四つの地上の大帝国を、神が愛された預言者ダニエルの夢の中に描かれたように、神の見地、神と一致する者の見地から見ることにしよう。私達にとっては、これらの帝国が不名誉なけがらわしいものとして映ったように、ダニエルにとってもこれら四つの世界的帝国は、四つの大きな貪欲な野獣として示された。従ってダニエルの夢では、来たるべき神の国(石)は、ネブカデネザルが見たより更に雄大なものであった。

 ダニエルは言う。

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   私は夜の幻のうちに見た。見よ、天の四方からの風が大海をかきたてると、四つの大きな獣が海からあがってきた。その形はおのおの異なり、第一のものはししのようで、わしの翼をもっていたが……第二の獣は熊のようであった。……その後、私が見たのは、ひょうのような獣で……その後、私が夜の幻のうちに見た第四の獣は、恐ろしい、ものすごい、非常に強いもので、大きな鉄の歯があり、食らいかつかみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは、その前に出たすべての獣と違って、十の角を持っていた。(ダニエル727

最初の三つの獣(ししはバビロン、熊はメド・ペルシヤ、ひょうはギリシャ)に関する素油脂アダム、すなわち頭、足、翼などはすべての象徴であって、今私達が調べようとしている第四の獣・ローマのそれよりも重要性に欠けるので省略する。

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The "Dreadful Beast"

   第四番目の獣、ローマのことをダニエルはこのように言う。その後、私が夜の幻のうちに見た第四の獣は恐ろしい、ものすごい、非常に強いもので……十の角を持っていた。私がその角を注意して見ていると、その中にまた一つの小さい角が出て来たが、この小さい角のために、さきの角のうち三つが、その根から抜け落ちた。見よ、この小さい角には、人の目のような目があり、また大きな事を語る口があった。(ダニエル778

 

The three horns of the Roman Empire

 

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The "Little Horn"

     ここにローマ帝国が示されている。その帝国の権力の分割は、権力の象徴である十の角で示されている。その中から出てきて、他の三つの権力を自分の所有とし、支配を振るった小さい角は、小さな所から始まり、次第にローマ教会の権力へと持ち上がった法王制度の権力を表わしている。

   それが影響力を増すにつれて、ローマ帝国の権力の三分割(ヘルリ族教区、東方教区、東ジュート族教区)は、政権としての法王権力の確立のために、その場所を明け渡して抜け落ちた。この最後の特別に注目される角、法王制度は、知性を表わす目と、言葉や主張を表わす口が特に著しい。

Dan7Dread.jpg (2397 bytes)      このローマを表わす第四の獣に対して、ダニエルはそれを表わす名前を与えていない。他のものがししのような、熊のような、ひょうのようなと説明されている一方、第四のものはいかなる地上の獣も、それと比較することが出来ない程、どう猛な恐ろしいものだったからである。黙示録のヨハネも、これと同じ象徴的な獣を夢に見て、それを表現する名前に当惑し、遂には幾つかの名前を与えているが、その一つに悪魔がある。(黙示録129

   彼は実に適切な名前を選んだ。というのは、ローマは血なまぐさい迫害という点から見る時、確かにすべての地上の政府の中で、最も悪魔的であったからである。異教的ローマから法王的ローマへの変化の中にさえ、サタンの主なる性質の一つを示している。なぜなら、ローマが異教主義からキリスト教徒に変り、*キリストの国と主張したように、サタンもまた光の天子に擬装するからである。(コリント1114

 
*ローマが悪魔と呼ばれる事実は、決して人格的悪魔を否定するものではない。むしろその反対である。というのは、その性質を知られているしし、熊、ひょうのような獣が存在するから、様々な政府が、それになぞらえられるのであると同様に、その性質を知られている悪魔が存在するから第四の帝国が悪魔になぞらえられるのである。

The Beast and
the Little Horn
are gradually destroyed.
     この最後のローマの獣について、特にその独特な法王的・角について、ある程度の詳細を述べた後、ダニエルはこの角に対するさばきに論及し、その権力は失われ始め、その獣が滅亡するまでゆっくりした過程を経て消耗することを示している。
The Beast
will be slain
by the rising
of the masses
in the Day
of the Lord.

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     この獣、ローマ帝国は、その諸々の角、又は分割の状態において、今なお存在する。そして天的支配力を認識させるための準備である主の日に、一般大衆の勃興と政府の打倒によって滅ぼされるであろう。このことは、これから研究しようとしている他の聖句に明らかに示されている。先ず法王的角の消耗が最初に来る。

   18709月にヴィクター・エマニュエルの手によって、その権力の最後の痕跡を失うまで、法王制度の一時的権力は日一日と衰退していった。

しかしながら、法王制度が衰亡しつつある間、その偉大な冒涜のことばは語られ続けた。その最後の偉大な言葉は、1870年に法王制度打倒の数ヶ月前に宣言された教皇無謬説であった。これらは、すべてダニエルの預言の中に認められている。

Great swelling words of the
Little Horn.

私はその時(すなわちその衰亡が始まってから後、この角に対して布告がされた後)その角の語る大いなる言葉の声がするので見ていた。(ダニエル711

The fourth empire
will go into
utter destruction symbolized by the lake of fire. 
Revelation 19:20

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     こうして私達は、歴史の歩みを現代にまでたどり、この地上の帝国に関する限り、期待すべきものは滅亡だけであることを見るのである。次に起こる事柄は、私が見ている間にその獣は殺され、その体はそこなわれて、燃える火に投げ入れられた。

   と説明されている。殺すとか燃えるとかは、獣それ自体と同様にシンボルであり、現在の組織された政府の全く希望のない滅亡を意味する。12節でダニエルは、この第四の獣の最後と、それに先立つ獣の最後との間にある違いを述べている。

   彼ら三つ(バビロン、ペルシャ、ギリシャ)は、その地上での支配権を失ったが、国としての命は、すぐには奪われなかった。ギリシャとペルシャは、世界的支配権をその手から奪われて以来、何百年も経つ今日でさえ、その命を維持している。

   しかし、これらの獣のうち、最後のもの、ローマ帝国はそうではない。ローマはその支配権と命とを同時に失い、全く滅亡し、それと共に他の帝国も滅びるであろう。

The Fifth Universal Empire (the Kingdom of God)
is to be
an everlasting dominion.

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     何がその手段として、又は道具として使われようが、この滅亡の原因は、地上の第五帝国、すなわち支配の権利を持つキリストの下に来る神の国の建設である。第四の獣から、メシヤの統治下に、神に定められた時に行われる第五の王国への移行は、ダニエルによってこのように説明されている。

   見よ、人の子のような者が、天の雲に乗ってきて、日の老いたる者のもとに来ると、その前に導かれた。彼(頭と完成した体をともなうキリスト)に主権と光栄とくにとを賜い、諸民、諸族、諸国語のものを彼に仕えさせた。その主権は永遠の主権であって、なくなることがなく、その国は滅びることがない。

   これをダニエルは次のように解決する。すなわち、国と主権と全天下の国々の権威とは、いと高き者の聖徒たる民に与えられる。彼らの国は永遠の国であって、諸国の者はみな彼らに仕え、かつ従う。(ダニエル71327

"For he must reign, till he hath put all enemies under his feet."
I Cor. 15:25
     このように地上の支配は、エホバ(日の老いたる者)によって、キリストの手に委ねられ、キリストはすべてのものを、その足のしたに従わせるであろう。(コリント1527)こうして神の国の王位につき、キリストはエホバの意思と律法に反するすべての権威と権勢を従わせるまで支配を続けることになっている。

   偉大な使命を果すためには、異邦の政府を打倒することが先ず必要である。なぜなら、この世の君に以ってこの世の国々は、平穏に国を明け渡さないので、力によって縛られ、拘束されなければならない。聖書にこう書かれている。

   彼らの王たちを鎖で縛り、彼らの貴人たちを鉄のかせで縛り付け、しるされたさばきを彼らに行うためである。これは、そのすべての聖徒に与えられる誉である。(詩篇14989

"Thy Kingdom come, Thy will be done in earth,
as it is in heaven." Matthew 6:10

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御国を来たらせ給え

私達の主と、預言者ダニエルの見地から、現在の支配を眺め、彼らの貪欲な、破壊的、利己的性格を知る時、私達の心は異邦的支配の終りを望み、現在の勝利者がその頭と共に、うめき苦しむ被造物を支配し、回復するために王位につく喜びの時を、渇望せずにはいられない。すべての神の子は、主と共に心から御国を来たらせ給え、御心の天になるごとく地にもなさせ給えと祈ることが出来るであろう。

 

 

 

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God’s kingdom is to be inaugurated before the kingdoms of this world fall.

     大きな像の中に示され、獣によって示されたこれらの支配力の各々は、それらが権勢を持つ以前から存在していた。それと同様に、真の神の国についても同じことが言える。神の国は世界から分かたれ、支配力を得ようとせず、日の老いたる者によって定められた時を待ちつつ、長い間存在しているのである。

   そして神の国も、他の国々と同様、その権力を行使して、以前に存在した獣、すなわち国々を打ち破る前に、先ずその使命を受け、権勢の地位につかねばならない。従って次の聖句の妥当性を見る。

   それらの王たちの世に(彼らがまだ力を持っている間に)天の神は一つの国を(権勢と権力において)立てられます。それらが立てられた後、これらのもろもろの国を打ち破って滅ぼすでしょう。そしてこの国は、立って永遠に至るのです。(ダニエル244)従って、私達がいかなる神の国を期待しようとも、神の国がこの世の国々の滅亡以前に始まること、そして神の国の権力と打撃が他の国々の滅亡をもたらすことを期待すべきである。

 

 

Satan’s power
has not been absolute.

 

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Emperor Hirohito

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Benito Mussolini

他の見地から見た現在の支配

 世界を支配する最高の権利と権威は、たとえ誰に与えられようとも、その至上権は永遠に創造主エホバに帰すべきである。王の王に対する不忠誠の結果もたらされた不完全と弱さのために、アダムはすぐに弱い無力の者となった。かつて君主として、その意志の力によって動物に命令し、支配したその権力を失い始めたのである。

   又、自分自身を支配する力も失ってしまった。その結果、彼が善を行おうとする時、彼の弱さがそれを妨げ、逆に悪が彼の中に存在するのを見た。すなわち彼が行おうと思う善は行わないで、行おうと思わない悪を行うのである。

だから、私達反逆者である人類の罪を弁解する訳ではないが、私達は、人類を治め、人類の幸福のためになされる無益な努力に対し、同情せずにはいられない。しかし、この世の政治において、世界は全く成功していないということは出来ない。というのは、これらの支配体制の獣のような廃退した性格を認めるにもかかわらず、それらは無法や無政府状態よりもはるかに優っているからである。

   恐らく無政府状態は、この世の君にとって全く好都合であったかも知れないけれども、その民にとってはそうではなかったのである。従って、サタンの力は絶対ではないことが分る。人類を操るサタンの能力はある程度限られている。そしてサタンの政策は大部分、人類の観念、感情、及び偏見に順応しなければならない。人類の観念は、神から独立して自治体をつくることであった。

  128)それ以来、人間は自分の個人的弱さと戦うと共に、サタンの陰謀に対抗するための努力を必要とするようになった。

Mankind’s governments try
to promote justice.

 

Where justice
has been ignored, revolutions
have resulted.

 

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Joseph Stalin

     世界はこのような状態なので、私達はここに再び神から離れて自治を試みようとする人類の努力の見地からこの世の国々を眺めてみよう。個人的腐敗と利己主義とは、正義の道から外れ、従ってこの世の国の下にいるいかなる人も、完全な正義を行うことは稀であるけれども、かつて人類の間に組織されたすべての政府の表面的目的は、すべての人々の正義と幸福を促進することであった。

その目的がどの程度達成されるかは別問題であるが、すべての政府は、その目的のために存在すると主張し、又これに従い、これを支持する大衆も、同じ目的を持つのである。そして正義の目的が無視される所では、大衆がその目的に関して盲目にされるか、だまされるか、或いは戦争、騒乱し、革命がその結果として起こったのである。

世界の政治において、権力の地位を築いた低劣な暴君の醜行は、これらの政治の法律や制度を代表している訳ではないが、その権威を悪用し、低劣な目的に変えることによって彼らは、これらの政府に獣のような性質を与えたのである。すべての政府は、多くの賢明な、正しい、良い法律――命と財産の保護、国家の利益と商業の利益の保護、犯罪者の刑罰など――を持っている。

  彼らは又、正義が少なくともある程度行われる場である、論争のための法廷を持つ。それらの任務にある人々が、いかに不完全であろうとも、そのような制度の利益と必要があることは明らかである。いかにそれらの政府が貧弱であるにせよ、それらなくしては、社会の低劣な分子は、多数の力によって、より正しい、より良い分子を圧倒するであろう。

Satan has operated through the weaknesses and depraved tastes
of rulers.

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Vladimir Lenin

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Adolf Hitler

獣のような人間の支配

人間の弱さと腐敗した嗜好や観念に乗じたサタンの陰謀であり、欺きであるには違いないけれども、不正な支配者の大多数によって与えられたこれらの政府の獣のような性格を私達は認める一方、貧弱な堕落した人間の自治を試みようとする最善の努力を認めないわけにはいかない。幾世紀もの間、神は、彼らにそのような努力をすることを許し、その結果を見ることを許された。

  しかし、何世紀もの実験の後、今日のその結果は、世界の歴史上のいかなる時代よりも満足からほど遠いものである。事実、不満はかつてないほど、一般的、かつ広範囲に及んでいる。それは、圧制と不正とがかつてない程強くなったからではなく、神の計画の下に、知識の向上によって、人間の目が開かれたからである。

The increase
of knowledge
and spirit of independence
are curtailing Satan’s influence.
     時代を追って建設される様々な政府は、人民を代表して自治を行う人々の平均的能力を現わしてきた。たとい専制的政府が存在した所でさえ、大衆が彼らを耐え忍んだという事実は、国民としての彼らが、より良い政府を建設する能力も、それを維持する能力もなかったことを証明している。もっとも、平均的立場よりも、はるかに進歩した多くの個人が常にいたことは疑いない事実である。
Preparation
for the time
of general public enlightenment.

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     現在の世界の状況と、過去のあらゆる時代の状況とを比較する時、私達は、大衆の感情に著しい違いがあることを発見する。現在は、独立の精神が普及し、人類は支配者や政治家によって、容易に目をくらまされ、欺かれ、導かれなくなった。だから彼らはもはや過去の時代の束縛に服従しないであろう。

   一般の人々の感情、すなわち世論のこの変化は、人類が自治への努力を始めたその時から次第に変ってきた訳ではなく、16世紀の頃から始まったことは明白である。そしてその進歩は、過去50年間に最も急速であった。従って、この変化は、過去の時代に得た経験の結果ではなく、人類の大多数の間に広がった近代の知識の向上と増進に伴う自然の結果なのである。

   この知識の一般普及への準備は、1440年A..頃の印刷の発明と、その結果である書物やニュース定期刊行物の増加と共に始まった。この発明の一般教化への影響は、16世紀頃から感じられ始めた。そしてその進歩の段階は、その時以来、世人のよく知るところである。大衆の一般的教育は盛んになり、発明、発見は日々の出来事となったのである。

   神の定められた時が至るに及んで実現されつつあるこの人間の知識の向上は、現在サタンを縛る――地上に神の国を立てるためこの準備の日に、サタンの力を奪い、その権勢を制限する――業がなされつつある強力な力の一つである。

 

 

Knowledge brings
an awakening
of self-respect and a realization of rights.

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Martin Luther King, Jr. 

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Rosa Parks

     各方面における知識の増大は、人々の間に自尊心の感覚と侵害を許さない当然の権利への認識を自覚させる。それらはもはや無視したり、軽蔑したりすることが許されないばかりでなく。むしろその正反対の極端に走ろうとするのである。数世紀をふり返って、国々の歴史がいかに人民の血による不満を書き記してきたかを見るがよい。

   預言者達も、知識の増大のゆえに、もっと広範囲に及ぶ不満が遂には全世界的革命において、すべての法律と秩序の打倒において表現され、その結果、無政府状態と苦悩がすべての階級の上に及ぶ。しかし、その混乱の中に、天の神は、すべての国民の望みを満たす神の国を立てられる、と語っている。

   自分自身の失敗にうんざりし、落胆し、最大の努力が無政府状態に終るのを見て、人間は天の権威を大歓迎し、その前に頭を下げるであろう。そしてその強い正義の支配を認識するであろう。このように、人間の苦境が神の好機となり、すべての国民の願い――栄光と力の神の国――が叶うであろう。(ハガイ27

Man’s extremity -- God’s opportunity.      これが神の目的であると知りながら、イエスも使徒達も、地上の支配者に対し没交渉の態度をとった。反対に彼らは、権力の悪用の下にしばしば苦しめられたにもかかわらず、これらの権力に従うよう教会に教えた。
"Now therefore
ye are no more strangers and foreigners,
but fellow citizens with the saints,
and of the household of God."
Ephesians 2:19

 

 

After the death
of the Apostles, preaching of the coming kingdom
of God was unpopular.

   彼らは、法律に従うこと、たとえ個人的には尊敬するに価しなくとも、その任務のゆえに、権威についている者を尊敬すること、定められた税金を払うこと、神の律法に矛盾しない限り、(使徒行伝419529)いかなる法律にも抵抗しないこと(ロマ1317、マタイ2221)を教会に教えた。主イエス、使徒たち、初代教会はみな、この世の政府から離れ、それに参加することはしなかったけれども、法律を守った。

     神の教会は、すべての注目と努力とを、神の国に宣べ伝えることと、聖書に示されている計画に従って、その御国の利益の増進とに集中すべきである。

   もし、それを忠実に成し遂げようとするならば、現在の政治に手を出す時間も、傾向も持ち得ないであろう。主もそれに費やすべき時間を持たなかったし、使徒達もそれに費やす時間を持たなかった。また、その模範に従おうとするいかなる聖徒もこれを持たないであろう。

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The Pope crowning Charlemagne

     使徒の死後、初代教会はこの誘惑にとりつかれた。すべての地上の国を置きかえ、十字架につけられたキリストを後継者とする、来たるべき神の国を宣べ伝えることは、人気がないばかりか、迫害、侮辱、軽蔑を招いた。

   そして、一部の人々は、神の計画を改良し、苦しむかわりに、この世の歓心を買う地位に教会を置こうと考え、地上の権力と結合することによって成功を治めた。その結果、法王制度が生まれ、やがて淫婦である国々の女王となった。(黙示録1735187

    この政策によってすべてが変えられた。苦しみのかわりに名誉が、謙遜のかわりにプライドが、真理のかわりに偽りが、そしてかつて迫害された教会が今は、その新しい不法の名誉を非難するすべての者を迫害する者になった。

   続いて彼女は、自分の政策を正当化するために、新しい理論や哲学を案出して、先ず自分自身を欺き、次に国々を欺き、約束されたキリストの千年支配は既に世に現われ、その王・キリストは、キリストの代理として、地の王たちを支配する彼らの法王によって代表される。と言い始めた。

   全世界を欺くことにおいて、彼女は成功した。彼女は彼女の主張に抵抗するすべての人々には永遠の拷問が待ち受けていると教えることによって脅迫し、すべての国々を――その誤りの教理で――酔わせた。(黙示録172)それから間もなく、彼女の勅令によって、仮定の権威の下に、ヨーロッパの王たちは、戴冠したり退位したりするようになったのである。

Next, the nominal church, uniting
with governments of earth, claimed that the reign of Christ had come.
     このようにして、ヨーロッパの国々は、今日、キリスト教国と主張するようになった。そして、彼らの君主は神の恵みによって言いかえれば、法王の任命によって、またはプロテスタント派の或る者の任命によって、支配するのだと公言したのである。

   というのは、宗教改革者は、聖職者の権力など、法王制度の主張の多くを廃棄したにもかかわらず、地上の王たちはキリスト教に所属するものという名誉を抱いていたからである。このように宗教改革者も法王神権論者と同じ誤りに陥り、政府や国王を任命したり、認可したり、またそのような国をキリスト教国とかキリストの王国と名づけたりしたのである。だから、私達は、今日キリスト教世界と稱する不可思議な謎をよく耳にする。

   ――これは真の福音の本質から見る時、確かに謎である。私達の主は、弟子たちのことを、私が世のものでもないように、彼らも世のものではないと言っている。パウロも、この世と妥協してはならないと私達に忠告している。(ヨハネ1716、ロマ122

     神は、これらの国々をキリストの名によって呼ぶことを決して許さなかった。名目上の教会によって、だまされて、これらの国民はそうでないものをそうだと主張しながら偽りの旗の下に、その航路を走っているのである。人民の賛否表明を離れた彼らの唯一の名稱は、ネブカデネザルの語った、権威を持つ者が来るまでという神の制限付の許可において存在するのである。

不完全な法律と、しばしば利己的な悪い支配者を伴うこれらの不完全な国が自らを私達の主とその油そそがれた者の国と主張することは、平和の君正しい支配者、すなわち真のキリストの国に対する甚だしい名誉毀損であり、彼らは間もなくその前に倒れるであろう。

Children of God were distracted from the promised heavenly kingdom.

教会と政府の不法な結合

   その誤りから生じたもう一つの重要な害毒は、神の子たちの注目が、それによって約束された天国からそらされ、地上の国への不当な認識と、それに親しみ、真の王国とその希望に関する福音を無視して、野生的、世俗的な幹にキリスト教の恵みと道徳を接ごうとする、実のらない試みへと導かれたことである。この欺きの下に、現在、一部の人々は、神の名をアメリカ合衆国の憲法の中に組み込み、それによって合衆国がキリスト教国となることをしきりに願っている。

   改革長老派は、ここ数年間、合衆国がキリストの国ではないという理由で、この政府の下に投票したり、議席を占めたりすることを拒否している。こうすることによって、彼らはキリスト者が他の事に参加することの誤りを認めているのである。

   私達は、この感情に対して大いに同情するが、しかし、もし神の名が憲法に組み込まれるならば、その事実がこの政府を、この世の国からキリストの国へと変え、従ってその下に投票や議席を占める自由を認めるという結論には賛成しかねる。なんという愚劣であろう!

 大淫婦がすべての国々を酔わせたその欺きは、なんと大きいことであろう。というのは、同様の方法で、ヨーロッパの国々は、サタンからキリストに変化し、キリスト教国となったと主張するからである。

    この地上の最善の国も、最悪の国もこの世の国であるにすぎず、神から与えられたその権力の借用契約期間は、今まさに満了し、その場所は、定められた後継者、すなわちメシヤの王国、地上の第五世界帝国に明け渡されようとしている。(ダニエル2447141727――この見解は、真理を立て、誤りを倒すのに多くの益となるであろう。

    しかし、これに関する法王制度の行為が宗教改革者によって是認されたように、キリスト者の間でも疑いなく是認されるであろう。そして、キリスト者は、キリストの国を支持すべきなので、現在倒れつつある、いわゆるキリストの王国を擁護する義務があると感じているのである。

   その時が速い速度で終ろうとしているので、彼らの感情はしばしば、権利と自由の方向より、むしろ圧制の方向に強いられる。――すなわち、来たるべき真のキリストの国の方向より、むしろこの世の国とこの世の君の方向に向けられるのである。(黙示録1714191119

Kingdoms
of this world
are not Christlike.
     世界はこの世の国はキリストに以ていないこと、キリストの任命をおびるという彼らの主張は疑いなく誤りであることを急速に認識しつつある。人間は、この問題に関して、または、これと似たような問題に関して、理性の力を用い始めた。

   そして彼らは、正義の神と平和の君の名において、欺きが彼らの上に実行されてきたことを知る時、猛烈に彼らの確信を行動に表わすであろう。事実、多くの人々は、キリスト教自体が根拠のない欺きであり、世俗の支配者と同盟したその目的は単に大衆の自由を抑制することであると結論する傾向にある。

       人間がもし賢明であったなら、そしてその心を主の御業と計画とを理解することに向けたなら、現在の国々は次第に溶解し、改革に改革が次ぎ、自由に自由が次ぎ、そして正義と真理は地上に正義が確立されるまで支配するであろう。しかし、彼らはそれをしないであろう。いや、彼らの現在の堕落した状態では、それが出来ないであろう。

    だから、利己心で武装した各個人は征服のために努力する。そして国が始まって以来、かつてなかったような大いなる悩みの時に、この世の国は滅びるであろう。支配が権威を持つ者に渡される時、すでに過ぎ去った支配権を抱きつづけようと、むなしい努力をする者のことを、彼らは負けることが確実な戦いにいどむ者であるとして、主は次のように言う。

Make friends
with God’s
Anointed Son.

KissPope.jpg (15478 bytes)
Kissing the Pope's toe -- an erroneous application of "kiss the  Son" [God's Anointed Son]. 
Rulers of earth are to repent to avoid God's anger.

なにゆえ、もろもろの国びとは騒ぎたち、もろもろの民はむなしいことをたくらむのか。地のもろもろの王は立ち構え、もろもろのつかさはともに、はかり、主とその油そそがれた者とに逆らって言う。「われらは彼らのかせをこわし、彼らのきずなを解き捨てるであろう」と。

   天に座する者は笑い、主は彼らをあざけられるであろう。そして主は憤りをもって彼らに語り、激しい怒りをもって彼らを、恐れ惑わせて言われる。「私はわが王を聖なる山シオンに立てた」と。……それゆえ、もろもろの王よ、賢くあれ、地のつかさらよ、戒めをうけよ。

   恐れをもって主に仕え、おののきをもって、その(神に油そそがれた者の)足に口づけせよ(友となれ)。さもないと、主は怒ってあなたがたを道で滅ぼされるであろう。その憤りがすみやかに燃えるからである。すべて主に寄り頼む者は幸いである。(詩篇2161012

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